May 25, 2021

プログラマティック広告が、ネットワークサービスプロバイダ(NSP)のマージン拡大に一層の影響力を発揮

有料テレビプロバイダのコミュニティにおいて、コネクテッドホーム端末からの視聴者をターゲットにした広告が、強力なマネタイズ戦略として浮上しています。

新規のテクノロジーや規制が登場する中で、ネットワークサービスプロバイダ(NSP)は、ユーザーエンゲージメントを強化するとともに、これまで考えられなかった分野を新たな収益源とする好機を手にしています。たとえば、オープンでインテリジェントな顧客宅内機器(CPE)を介して配信されるプログラマティック広告です。ユーザー1人あたりの平均収益(ARPU)が減少し続けていることから、業界リーダーらは、収益の増大と利益率の向上を図るための新たな手段を追求しています。

NSPコミュニティにおけるプログラマティック広告戦略の進化や、有料テレビ系プロバイダのマージンに及ぼす影響について、テクニカラー・コネクテッドホームのグローバルCPEビデオ部門でシニアバイスプレジデントを務めるクリスチャン・ルフェーヴルならびにHoppr社CEOのシリル・ダウド氏に質問しました。

以下に、両氏の見解をご紹介します。

質問者:本日は、貴重なお時間をいただきありがとうございます。早速、クリスチャンにお尋ねします。そもそも、NSPコミュニティにおけるプログラマティック広告の意義とは何ですか?

以下に、両氏の見解をご紹介します。

クリスチャン・ルフェーヴル: 何といっても、世界の広告市場は巨大な規模を有します。その年間収益は、約1600億ドルに達します。ネットワークサービスプロバイダは、ネットワーク運用コストの増大に合わせ、収益拡大分野を特定しなければなりません。そこで、有料テレビ事業者のマネタイズ戦略においては、ターゲットを絞ったプログラマティック広告が、収益効果の高いオプションとして浮上しています。

シリル・ダウド: 有料テレビ事業者は、そもそもケーブルテレビと衛星放送の延長上にあり、トリプルプレイサービス(電話、映像配信、ブロードバンド)によるマネタイズを主戦力としてきました。今ではネットワーキング、CPE、テクノロジーの進化を受け、広告市場におけるポジション強化の好機を獲得しています。このような機会獲得は、かならずしも即時的な結果につながらないかもしれません。しかしながら実質的に真の好機であり、実際に成長が観察されています。

このために、業界リーダーらは、マネタイズ手段としてのプログラマティック広告の理解と採用に手間暇をかけており、業界全体の関心が高まっています。有料テレビの加入者と提供コンテンツ間には独特の関係性があります。このような関係性は非常に興味深く、ブランドサイドでも広告代理店サイドでも顕在化され始めています。

質問者:多くのNSPでは、ウェブベースでコンテンツにアクセスする消費者が拡大した結果、コードカッティングが相次ぎ、主要な収入源を失うという悲痛な時期を経験しています。プログラマティック広告は、この過渡期で失われた収益を補填する機会となるでしょうか?

シリル・ダウド: ええ、そうなります。広告こそが、映像配信業者の収益回復策として次の主流となることでしょう。すでに世界中でこのような動きが観察されています。しかし、実際にこのポテンシャルを活かして収益増に紐づけるには、デジタルプログラマティック広告の特性や、エンドユーザーとコンテンツの関係性を把握しなければなりません。

着実に進化を遂げてきた広告市場において、これは次のステップだといえるでしょう。広告は、はじめて導入された際には、コンテンツエクスペリエンスに欠かすことのできない一部のように思われました。人々は広告視聴を楽しみ、広告による番組の中断が弊害とみなされることもありませんでした。私自身、幼い頃に広告を楽しみにしていて、いまだに忘れられない数々のコマーシャルソングがあります。有料テレビに移行し、中断なしの番組づくりを当前のように感じるようになったのは、ごく最近のことです。

今日、有料テレビ事業者には、広告によって広告そのものへの関心を回復することが求められています。広告を「楽しい」コンテンツにすると同時に、視聴エクスペリエンスを中断のないものに変えなければなりません。視聴者を行動に基づいて本質的に的確に理解し、ダイナミックかつ戦略的に広告を盛り込みこむことで、ユーザーエンゲージメント、そしてユーザー定着率の向上が実現できるでしょう。有料テレビ事業者にとって、広告は簡単に実行できる有効な収入源になるという事実も言い添えておきます。

クリスチャン・ルフェーヴル: たしかに広告は巨大な好機です。ただし、いくつかの障害も考えられます。ごく最近まで、プログラマティック広告においてNSPが重要な役割を果たすには、実用面、技術面、規制面の障壁がありました。

  • 実用面でいえば、いまだプログラマティック広告が正しく理解されていないことが挙げられます。経営陣は、広告をマネタイズ戦略に組み込むための明確な方針を定めていません。
  • 技術面においては、従来のCPEが独自仕様になっていることから、非オープンで簡単に変更ができないことが挙げられます。プログラマティック広告では、フレキシビリティ、インテリジェンス、セキュリティが要件とされます。
  • 最後に、規制環境があいまいで地域によって異なることから、一貫性が欠如しています。
ひとつ朗報があるとすれば、これら3つの側面にいずれも進歩が見られることでしょう。たとえば2020年8月にフランスで規制が変更され、ネットワーク事業者による動画配信が認可されました。これは大きな進展であり、ターゲティング広告をより広範囲に配信する足掛かりとなりました。

テクノロジー面では、テクニカラーによる新世代CPEの市場投入がフレキシビリティ、インテリジェンス、セキュリティをもたらし、NSPが効果的で収益性の高いプログラマティック広告戦略を実施できるようになります。

プログラマティック広告への関心は、従来のCPE(通常、高価で変更の難しい複雑なLinuxベースのオペレーティングシステムに基づく)を、より強力で構成可能で、ビジネス上の変化に対応できるオープンなプラットフォームに変改しようとする業界の取り組みに紐づけられます。

新しい動きが成熟するにつれ、経営陣も自社ビジネスプランにプログラマティック広告を組み込む方法に対し、理解と経験を深めつつあります。

質問者:クリスチャン、それは興味深い視点です。たしかに、長きにわたってNSP業界は、機能と堅牢性が制限される自社独自の単一機能型のLinuxベースCPEに依存していました。新しいオープンプラットフォームCPEは、どのように受け入れられていますか?

クリスチャン・ルフェーヴル: これは、まさに的を得た問いであり、技術的課題のかぎを握っているように思います。オープンプラットフォームによって、ソフトウェアソリューションをセットトップボックスに統合するフレキシビリティが実現されました。

テクニカラー・コネクテッドホームはHopprと協働し、この点に取り組んでいます。Hoppr TVはフレキシブルでスケーラブルなソリューションであり、ネットワークやビジネスプロセスの大幅な再設計を要しません。多くの事業者がサービス提供エリアに無数のデバイスを配備していることを考慮すると、この重要さが分かるでしょう。Hopprの製品は、展開デバイスに依存しません。

シリル・ダウド: まさにその通りです。多数の異なるSTBをエリア内に有する事業者でも、ソフトウェアの更新を実行するだけで広告プログラムを開始できます。追加的な資本的支出((CAPEX)を要することなく、大規模展開し、即座にマネタイズできます。

質問者:収益創出の好機には、一般的に多大なCAPEXが伴います。広告に関連したマージンチャンスとは何でしょうか? また、投資回収に必要とされる時間とは?

シリル・ダウド: 答えは、各広告ソリューションによって異なります。多くのソリューションには、CAPEX、専用のコンテンツ配信ネットワーク(CDN)、専用の広告サーバー、そして、すべてをサポートして維持するためのリソースが必要となります。ただし、そこから得られる広告収入は、かなりの規模となります。こういった理由から、プログラマティック広告戦略を検討するNSP向けに開発されたソリューションが近頃増えてきています。

NPSにとっての課題は、これらのアドテク製品の多くが、技術的問題と低水準の管理問題にしか対処できないことでしょう。広告ビジネスの動向に精通していないNSP経営陣は、自衛手段として、効果的、効率的、収益性の高いバリューチェーンにつながるよう、ブランドと広告代理店のコミュニティを構築して統合しなければなりません。

さらに、これらのアドテクソリューションの多くは、CAPEXのほかに専用のコンテンツ配信ネットワークも必要とするため、独自の広告サーバーを維持するリソースとメンテナンスが要求されます。

Hopprでは、別のアプローチを採用しています。弊社は、コネクテッドホーム端末からの視聴者に積極的にリーチしたいブランドと広告主のコミュニティをすでに構築しています。また、電話、映像配信、ブロードバンドサービスによるトリプルプレイサービスの提供を主眼とする事業者に即時採用いただける価値提案を設計しました。

HopprがIPネットワーク上に存在することによって、事業者は、コネクテッドホーム利用者に提供されるサービスとエクスペリエンスのクオリティを直接制御することができます。また、広告ストリームの配信には同期の必要がないことから、CDNも要求されません。Hopprソリューションは、非常に高効率かつフレキシブルに設計され、事前認証済みのため追加統合の必要もありません。事業者はHopprTVを展開した翌日から、広告収入を得ることができます。

テクニカラーとHopprのコラボレーションによって、収益化の手段として広告が重要なファクターであるという事実を事業者に再確認していただけるでしょう。テクニカラーは、100年以上の歴史を有する信頼のブランドです。Hopprとテクニカラーのパートナーシップは、事業者の信用につながるでしょう。このソリューションが信頼できるものであり、事業者にも既存のインフラストラクチャにもダメージとならないことは、ご納得いただけるはずです。

クリスチャン・ルフェーヴル: 新しい収益源を模索する有料テレビ事業者に向け、広告配信を追加するためのシンプル、スケーラブル、フレキシブルなソリューションを開発しました。現在、テクニカラー・コネクテッドホームはティア1事業者と協力し、少ない投資で高い収益につながることを実証しています。すべての要素がかたちとなり、エコシステムが軌道に乗り始めています。

テクニカラー・コネクテッドホームは、オープンで革新的な技術を通じて世界中のNSPをサポートするべく、絶えず努力を重ねています。今回のHopprとの協働はその最新例です。

クラス最高のCPEを開発し、最も独創的な企業と提携し、コネクテッドホーム・エコシステムを形成することで、シームレスな接続と高品質なエクスペリエンスを消費者に提供する一助となること。それが最終的な目標です。