November 10, 2020

日本のケーブル事業者、4K UHDコンテンツに対する消費者の需要を満たす機会を探る

日本での4K(UHD)コンテンツの普及は、様々な市場要因により遅れていますが、2021年に開催が予定されている東京オリンピックや、グローバルプロバイダーによるプレミアムストリーミングサービスへの関心の高まりなど、一連の状況の変化により、現在のところ低水準にある没入型コンテンツフォーマットの需要も刺激されつつあります。ケーブル事業者はこの状況を踏まえ、コスト効率の良い方法で4Kの需要を満たすためのオプションを早急に探ろうとしています。テクニカラー・コネクテッド・ホーム部門による本レポートでは、ケーブル事業者が配信できる4Kコンテンツ市場の急成長を受けて、最も効果的に需要を取り込むために追求すべき戦略のレビューとともに、市場を牽引する要因について探っていきます。

現在の市場動向

  • ABIリサーチと IHSマークイットの分析によると、日本市場における 4K UHDテレビの世帯普及率は、2020年には 19%近くの成長が見込まれ、2023年までにはさらに 32%増加すると予測されています。また、2020年に日本で販売されるセットトップボックスの 46%が 4Kで、2023年には 60%に増加すると予測されています。
  • この予測成長率の土台には、過去 5年間に日本の初期採用層に見られた強い需要があります。2015年に日本の一般家庭に出荷された 4K UHDテレビは 60万台強でしたが、その後の市場は 400%以上成長し、2019年の出荷台数は 258万台に到達しています。
  • これらの成長率は印象的ではあるものの、日本における 4K UHD体験に対する需要は他の先進国市場に比べて比較的低く、人口の 32%は 4K UHD体験に心からの関心を示してはいません。その主な理由は、コンテンツと制作体制の問題にあります。日本で国内向けに制 作されるコンテンツのほとんどは 2K放送用です。結果的に、4K番組を上映できるコネクテッドホームデバイスの普及率が比較的低くなり、4Kコンテンツの制作を妨げています。
  • しかし、こうした市場動向は急速な変化の過程にあります。グローバルなストリーミング・サービス・プロバイダーが提供する海外コンテンツに対しての需要は旺盛で、特に日本の初期採用層の間で勢いを増しています。この海外コンテンツの大部分は、4K UHDでストリーミングされています。
  • その一方で、初期採用層から日本のケーブル事業者に突き付けられた課題もあります。消費者の多くにコードカット(ケーブルテレビ離れ)の傾向が見られ、STB(セットトップボックス)が不要になっていくという問題です。

東京オリンピックと COVID-19をきっかけに 4K UHDの需要が拡大

  • 東京オリンピックに対する国民的な関心の高さから、従来のケーブル事業者との関係を維持しつつも、より高度な手段でイベントを視聴したい加入者の間では、4K UHDの訴求力が高まることが期待されています。
  • また、4K UHDへの関心を高める要因として、「COVID-19」が浮上してきました。未曾有のパンデミックの出現により、人々は人混みを避け、社会的距離を置き、可能な限り自宅で過ごす必要に迫られています。スポーツイベントに直接出席できない状況に直面した人々は、スポーツイベント(オリンピックを含む)のライブ放送を通じて、4Kが提供する高精度な画質で自宅で体験したいと考えています。
  • 高度な 4K UHDフォーマットの視聴に対する需要の増加は、オリンピックをきっかけに他のスポーツやライブ・エンターテイメント放送にも波及することが当然期待されます。
  • 5月に実施された最新の放送サービス高度化推進協会(A-PAB)による調査に加えて、ABIリサーチと IHSマークイットの調査でも、一般家庭のケーブル普及率がクリティカルマス(一定の臨界点)に達すると、それまで 4K UHDの普及を妨げてきたコンテンツと制作体制の問題は解消されると予測されています。それにより、リアルタイム放送とビデオ・オン・デマンド配信の双方のコンテンツプロバイダーの市場が創出されるものと期待されます。その結果、さまざまな 4K UHDサービスが組み合わされて、日本の視聴者にとって非常に魅力的な価値が提案されることになるでしょう。株式会社オフィス Nの代表取締役、西正氏は、著書「4K、8K、スマートテレビの行方」(中央経済社、2015年)の中で既に下記のように述べています。「4Kサービスの認知度向上は欠かせないが、受信機の登場からの期間が長すぎては効果を期待しにくい。これを機に、VODサービスの利用が進むことも、有意義であると思われる。過去の事例も何らかの教訓となって然るべきであって、サービスの登場するタイミング次第で、マーケットのサイズは大きく変わると思われる。4KVODの商用化は、非常に重要な要素 と言えるはずである。」、「まずは4Kの VODから触れていきながら、その過程でキラーコンテンツが何なのかといったことも開拓できることが期待される。放送と受信機だけの世界では難しかったことだが、単品ベースでも4Kコンテンツに触れられる機会が先行できたということで、4KVODが先行してスタートしたことの功績は大きいと思われる。」

4K UHD STB導入のための勝ち組戦略の構築

  • 4K UHDコンテンツを加入者の期待通りに確実に提供するためには、ケーブル事業者には迅速かつ慎重に行動することが求められます。日本の消費者の間では、この高精度で没入感のあるフォーマットでコンテンツを体験したいという関心は高まってはいますが、支出意欲はそれほど高くありません。
  • したがって、費用対効果が極力高い方法で優れたコンテンツ体験を消費者に提供できるように、4K UHD STB戦略を設計、開発、展開することが重要になります。
  • また、ケーブル事業者が STB機器にソフトウェア・アップデートを自動適用して、時間の経過とともに価値を追加していけるような、拡張可能な機器を展開することで、この戦略の将来的な継続性を確保することが重要になります。
  • 日本では、OTT(オーバーザトップ)、IPTV、SVOD(定額制動画配信)に対する強い需要があるため、こうした様々なコンテンツ消費モデルに対応し、管理できる STB技術を展開することも重要になります。
  • GlobalDataのアナリストによると、日本の有料放送サービスの総収入は、2019年から 2024年の間に 1.9%の CAGR(年平均成長率)を記録し、2019年の 89億ドルから 2024年には98億ドルに増加すると予測されています。日本における OTTベースのビデオサービスの需要拡大に端を発したケーブルテレビ離れの傾向は続くものの、予測期間中の有料テレビサービスの収益全体の成長は、主に有料テレビサービスの総 ARPU(ユーザー 1人当たりの平均収益)の改善によって支えられるだろうと報告されています。
  • 日本のケーブル業界の大手各社は、dTV、Amazonプライム、Hulu、楽天 TV、U-Next、DAZN、Netflixなどの定額制動画配信(SVOD)事業者を歓迎し、これらの SVOD事業者と既に 4K UHDコンテンツの配信契約を締結しています。こうした SVODサービス上で人気がある 4K UHDコンテンツを提供することが、消費者の需要を牽引する上で大きな役割を果たすことになるでしょう。
  • ケーブル業界が収益性の高い 4K UHDコンテンツ配信に向けて積極的なステップを踏む中で、事業者がやっておくべきことは、加入者がこれらのサービスにアクセスできる STBプラットフォームを用意することです。

テクニカラー、日本のケーブル事業者向けに未来に対応した 4K UHDソリューションを提供

  • 日本のケーブル事業者がこの需要に応えるためには、消費者が求めるコンテンツ消費モデルに対応する STBプラットフォームを展開してきた経験と専門知識を持ち、成功した実績を持つ STBソリューションプロバイダーと提携する必要があります。
  • テクニカラー・コネクテッドホーム部門はまさにそのようなパートナーであり、将来を見据えた 4K UHD STBソリューションを開発しています。
    • 4K UHDコンテンツ配信のための機能、サービス、コンテンツ配信オプションを最大化
    • コストを最小限に抑制
    • 2K HDコンテンツ配信との下位互換性を維持
    • 4K UHDコンテンツを受信する加入者の高い期待に応えるための高度な CEM(消費者体験管理)ツールを提供
  • 日本のお客様に最も効果的な 4K UHD映像をお届けするために、テクニカラー・コネクテッドホームの STBは、4K UHDコンテンツに対応した HDR(ハイダイナミックレンジ)機能を搭載しています。
    • 劇場用コンテンツの精度を高める HDR(ハイダイナミックレンジ)機能
    • HFR(ハイフレームレート)画質
    • 広色域表示
    • A-CASセキュリティを導入し、現行の C-CAS技術からの移行をサポート